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平安時代に始まった漆の物語
11月13日は「うるしの日」。この日は、平安時代の皇子・惟喬(これたか)親王が、漆や漆器の製法を学び、技術の神として祀られたことにちなむといわれています。古来、日本では木の樹液である漆を使って器や仏像、建築物を仕上げてきました。その光沢と強靭さは、まさに“日本の美”を象徴する素材です。
危険な樹液が、永遠の輝きに変わる
漆は、ウルシの木の樹液から採取されます。生の漆には「ウルシオール」という成分が含まれ、触れるとかぶれることでも知られています。しかし、職人たちはその性質を理解し、扱い方を工夫してきました。生漆(きうるし)を精製し、湿度のある環境でゆっくりと硬化させることで、強く美しい塗膜が完成します。一度固まると、かぶれの原因物質は無害化し、耐水性・防腐性・耐久性に優れた素材となるのです。
千年を超えて輝き続ける日本の技
奈良の東大寺の仏像や、平安時代の漆器が今なお美しさを保っているのは、漆の力ゆえ。科学的にも、漆の被膜は化学変化しにくく、紫外線や湿気にも強いことがわかっています。まさに自然が生んだ“最強のコーティング材”といえるでしょう。
現代に受け継がれる漆文化
今もなお、輪島塗や津軽塗、会津塗など、日本各地で漆器づくりは続いています。環境にやさしい天然素材として、現代デザインの分野からも注目を集めています。11月13日は、そんな日本の伝統と自然の恵みに思いを馳せる一日にしてみてはいかがでしょうか。

